【高校物理】ドップラー効果(音波)

POINT

  • ドップラー効果の問題を統一的に考える方法.
  • 「振動数」=「単位時間あたりの波の数」がポイント.
  • 観測者が単位時間に観測する「波の数」を調べれば良い.

高校物理の内容です.

ドップラー効果が,全て同じ方法(単位時間に観測する「波の数」を数える)ことで解けることを見てみます.

【関連記事】
[A]波長・速度・振動数の関係を整理 - Notes_JP


ドップラー効果とは

「波源」と「観測者」が相対運動している場合には,「観測者」が観測する振動数は「波源」の発する波の振動数とは異なります.これをドップラー効果と呼びます.

身近な例として,救急車(波源)が近づいてくるときと遠ざかるときでサイレンの音の高さが変わるのは,ドップラー効果によるものです.

振動数(周波数)

ドップラー効果を理解するためには,「振動数」について理解することが重要です(参考:関連記事[A]).
「波源」にとっての振動数
「波源」にとって「振動数」は,単位時間に発する波の数である.

「観測者」にとっての振動数
「観測者」にとって「振動数」は,単位時間に観測する波の数である.

「波源」にとっての振動数は,「波源」と「観測者」が相対運動していても不変です.つまり,ドップラー効果は「観測者」にとっての振動数が変わることによって生じます.そして,その原因となるのは

  1. 波源の運動.
  2. 観測者の運動.
  3. 媒質の運動(風が吹くなど).
です.

考え方(解き方)

観測する振動数が,観測者が単位時間に観測する「波の数」であることが理解できれば,次の考え方ができます.
考え方
\begin{aligned}
&\text{(観測する振動数)} \\
&=\text{(単位時間あたりに観測する波の数)} \\
&=\frac{\text{(波の速さ)}}{\text{(波の波長)}}
\end{aligned}

具体的に,色々なパターンを見てみましょう.

【注】:「$\times\text{(単位時間)}$」の省略
以下では,振動数$f$の波源が単位時間あたりに発する波の数

\begin{aligned}
f\times\text{(単位時間)}
\end{aligned}
を単に「$f$個」,速さ$V$の波が単位時間あたりに進む距離
\begin{aligned}
V\times\text{(単位時間)}
\end{aligned}
を単に「距離$V$」と言うことにします.

波源だけが動く場合

波の速さを$V > 0$,波源が観測者に向かって動く速さを$v_{\mathrm{s}}$とする($v_{\mathrm{s}} < V$).

【Step. 1-1】
波源は,単位時間あたりに$f$個の波を発する.この波は,長さ$V - v_{\mathrm{s}}$の範囲に存在する.よって,波長は$(V - v_{\mathrm{s}})/f$であることがわかる.

【Step. 1-2】
静止した観測者は,単位時間あたりに長さ$V$の範囲の波を観測する.【Step. 1-1】の結果から,この範囲にある波の個数は,

\begin{aligned}
\frac{V}{(V - v_{\mathrm{s}})/f}
=\frac{V}{V - v_{\mathrm{s}}} f
\end{aligned}
となる.これが,観測する振動数である.

観測者だけが動く場合

波の速さを$V > 0$,観測者が波源に向かって動く速さを$v_{\mathrm{o}}$とする($-V < v_{\mathrm{o}}$).

【Step. 2-1】
波源は,単位時間あたりに$f$個の波を発する.この波は,長さ$V$の範囲に存在する.つよって,波長は$V/f$であることがわかる.

【Step. 2-2】
観測者は,単位時間あたりに長さ$V + v_{\mathrm{o}}$の範囲の波を観測する.【Step. 2-1】の結果から,この範囲にある波の数は

\begin{aligned}
\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{V/f}
&=\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{V}f
\end{aligned}
となる.これが,観測する振動数である.

波源と観測者が動く場合

波の速さを$V > 0$,波源が観測者に向かって動く速さを$v_{\mathrm{s}}$($v_{\mathrm{s}} < V$),観測者が波源に向かって動く速さを$v_{\mathrm{o}}$とする($-V < v_{\mathrm{o}}$).

【Step. 3-1】(【Step. 1-1】と同じ)
波源は,単位時間あたりに$f$個の波を発する.この波は,長さ$V - v_{\mathrm{s}}$の範囲に存在する.よって,波長は$(V - v_{\mathrm{s}})/f$であることがわかる.

【Step. 3-2】(【Step. 2-2】と同じ)
観測者は,単位時間あたりに長さ$V + v_{\mathrm{o}}$の範囲の波を観測する.【Step. 3-1】の結果から,この範囲にある波の数は

\begin{aligned}
\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{(V - v_{\mathrm{s}})/f}
&=\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{V - v_{\mathrm{s}}}f
\end{aligned}
となる.これが,観測する振動数である.

反射物がある場合

波源と観測者が,反射物に向かって運動している場合を考える.

波の速さを$V > 0$,波源が反射物に向かって動く速さを$v_{\mathrm{s}}$($v_{\mathrm{s}} < V$),観測者が反射物に向かって動く速さを$v_{\mathrm{o}}$,($-V < v_{\mathrm{o}}$).反射物が観測者(と波源)に向かって動く速さを$U$とする.

反射物は,波源とみなすことができる.つまり,単位時間あたりに反射する波の数が,反射物の発する波の振動数であるとみなせる.

【Step. 4-1】(【Step. 1-1】と同じ)
波源は,単位時間あたりに$f$個の波を発する.この波は,長さ$V - v_{\mathrm{s}}$の範囲に存在する.よって,波長は$(V - v_{\mathrm{s}})/f$であることがわかる.

【Step. 4-2】(【Step. 2-2】と同じ)
反射物は,単位時間あたりに長さ$V + \textcolor{red}{U}$の範囲の波を反射する.【Step. 4-1】の結果から,この範囲にある波の数は

\begin{aligned}
f^\prime
&= \frac{V + \textcolor{red}{U}}{(V - v_{\mathrm{s}})/f} \\
&= \frac{V + \textcolor{red}{U}}{V - v_{\mathrm{s}}}f
\end{aligned}
となる.これが,反射物が発する振動数である.

【Step. 4-3】(【Step. 1-1】と同じ)
反射物は,単位時間あたりに$f^{\prime}$個の波を発する.この波は,長さ$V-U$の範囲に存在する.よって,波長は$(V - U)/f^{\prime}$であることがわかる.

【Step. 4-4】(【Step. 2-2】と同じ)
観測者は,単位時間あたりに長さ$V + v_{\mathrm{o}}$の範囲の波を観測する.【Step. 4-3】の結果から,この範囲にある波の数は

\begin{aligned}
\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{(V - U)/f^\prime}
=\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{V - U} \frac{V + U}{V - v_{\mathrm{s}}}f
\end{aligned}
となる.これが,観測する振動数である.



特に,$v_{\mathrm{o}},v_{\mathrm{s}},U \ll V$であるとき,
\begin{aligned}
&\frac{V + v_{\mathrm{o}}}{V - U} \frac{V + U}{V - v_{\mathrm{s}}}f \\
&\simeq (1+v_{\mathrm{o}}/V)(1+v_{\mathrm{s}}/V)(1+U/V)^{2} f \\
&\simeq \biggl(1 + \frac{v_{\mathrm{o}}+v_{\mathrm{s}} + 2U}{V} \biggr)f
\end{aligned}
となる.

参考文献