【反例】Riemann積分可能でも,Lebesgue積分は不可能な例:sinx/x

POINT

  • 「Riemann可積分であり,Lebesgue可積分でない」有名な例の紹介.

関数$\dfrac{\sin x}{x}$は,広義Riemann積分可能でも,Lebesgue積分は不可能な有名な例として知られています.じゃあ,「Lebesgue積分はRiemann積分よりも計算できる関数が少ないのか?」といえばそうではありません.なぜなら,広義Riemann積分と同じものをLebesgue積分で計算することは可能であるからです.

RiemannとLebesgue積分の関係

RiemannとLebesgue積分の間には,以下のような関係があります:

  1. (狭義) Riemann積分可能な関数は,Lebesgue積分も可能.このとき,両者の積分は一致する.
  2. $f$が広義Riemann積分可能 (有限) でも,$f\geq 0$でないときには,Lebesgue積分可能とは限らない

2. の例として挙げられるのが,$\dfrac{\sin x}{x}$です.この関数は,$[0,\infty)$上で広義Riemann積分可能ですが,Lebesgue積分は不可能です.

以下で,詳しく見ていきましょう.

広義Riemann積分の計算方法

この広義積分
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
=\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}
は,例えば以下の方法で計算できます.

  1. 複素積分
    • これは複素解析の本でよく見る,お馴染みの方法ですね.
  2. Lebesgue積分論を用いて広義Riemann積分を計算
    • 極限をとるまえの積分は,「Lebesgue積分の結果=Riemann積分の結果」になることを利用するわけです.

Lebesgue可積分でないこと

$f(x)=\sin x/x$とする.
\begin{align}
f^+(x)
&=\max\{f(x),0\} \\
&=\begin{cases}
\, \sin x/x & (x\in [2k\pi,(2k+1)\pi] ) \\
\, 0 & (\text{otherwise})
\end{cases}\\
f^-(x)
&=\max\{-f(x),0\} \\
&=\begin{cases}
\, -\sin x/x & (x\in [(2k+1)\pi,(2k+2)\pi] ) \\
\, 0 & (\text{otherwise})
\end{cases}
\end{align}に対して
\begin{align}
\int_0^\infty f^+(x)\,\mathrm{d}x &= \infty \\
\int_0^\infty f^-(x)\,\mathrm{d}x &= \infty
\end{align}を示す($k\in\mathbb{N}$).

$f(x)=\sin x/x$は,$k\in\mathbb{N}$に対して
\begin{align}
&\int_{2k\pi}^{(2k+1)\pi}\frac{\sin x}{x} \,\mathrm{d}x \\
&\geq \frac{1}{(2k+1)\pi}\int_{2k\pi}^{(2k+1)\pi}\sin x\,\mathrm{d}x\\
&= \frac{2}{(2k+1)\pi}
\end{align}が成り立つ.この式から,任意の$n\in\mathbb{N}$に対して
\begin{align}
\int_{[0,\infty)} f^+ \,\mathrm{d}x
&\geq \sum_{k=0}^n\int_{[2k\pi,(2k+1)\pi]}f^+ \,\mathrm{d}x\\
&\geq \sum_{k=0}^n \frac{2}{(2k+1)\pi}
\end{align}となる.よって$n\rightarrow \infty$とすれば
\begin{align}
\int_{[0,\infty)} f^+ \,\mathrm{d}x
=+\infty.
\end{align}

同様に,$k\in\mathbb{N}$に対して
\begin{align}
&\int_{(2k+1)\pi}^{(2k+2)\pi} \biggl(-\frac{\sin x}{x}\biggr) \,\mathrm{d}x \\
&\geq \frac{1}{(2k+2) \pi}\int_{(2k+1)\pi}^{(2k+2)\pi} (-\sin x) \,\mathrm{d}x\\
&=\frac{2}{(2k+2)\pi}
\end{align}が成り立つから
\begin{align}
\int_{[0,\infty)} f^- \,\mathrm{d}x
=+\infty
\end{align}が示せる.したがって,$f$はLebesgue可積分ではない.//


注意:広義Riemann積分は,Lebesgue積分を使っても計算できる

Lebesgue積分では,広義Riemann積分の意味での
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}
を計算出来ないわけではありません!

というのも,$\dfrac{\sin x}{x}$はLebesgue可積分でないですが,Lebesgue積分論を用いて広義Riemann積分
\begin{align}
\underbrace{\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x}_{\text{広義Riemann積分}}
=\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}
\underbrace{\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x}_{\substack{\text{Lebesgue積分}\\ \text{=Riemann積分}}}
\end{align}を計算することはできるわけです.

この混乱の原因は,
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
\end{align}と書いただけではLebesgue積分なのか,広義Riemann積分なのか区別できないことにあります.

つまり,
\begin{align}
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
&=\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x\qquad(\text{左辺が広義Riemann積分を表す場合})\\
\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x
&\neq\lim_{\epsilon\to 0}\lim_{R\to \infty}\int_{\epsilon}^R\frac{\sin x}{x}\,\mathrm{d}x\qquad(\text{左辺がLebesgue積分を表す場合})
\end{align}であることに注意しなくてはなりません!