合成関数の微分で混乱したときの対処法

POINT

  • 合成関数を簡略化して書くと,計算の際混乱することがある.
  • 混乱した場合は「簡略化の記法をやめて,定義に戻って考える」と良い.

以前から,これ混乱しない?と思っていたので記事にしました.

そもそも「簡略化した記法」を使うことが多すぎて,「簡略化した記法である」ことを意識できていない人も多いのだと思います.この記事では,

  • 混乱を招く例
  • 混乱を解消する方法
を考察します.

【Q. 】混乱を招き得る簡単な例として,
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (-x),\quad
\frac{\mathrm{d} f(-x)}{\mathrm{d}x}
\end{align}の違いと,両者の関係がわかりますか?
【A.】
両者の意味は
  • 前者:関数$f$の導関数$f^\prime$の$-x$における値$f^\prime(-x)$を意味する.
  • 後者:合成関数$g=f\circ h\quad(h(x)=-x)$の導関数$g^\prime$の$x$における値$g^\prime(x)$を意味する.
であり,両者の関係は
\begin{align}
- \frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (-x)
=\frac{\mathrm{d} f(-x)}{\mathrm{d}x}
\end{align}となります.

【解説】
まず,前者は,
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (-x)
&=f^\prime(-x) \\
&=\frac{\mathrm{d} f(x)}{\mathrm{d}x} (-x) \\
&=\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x}(x)\Biggl|_{x=-x}
\end{align}の意味であり,後者は$g(x)=f(-x)$とするとき
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f(-x)}{\mathrm{d}x}
&=g^\prime(x) \\
&= \frac{\mathrm{d} f(-x)}{\mathrm{d}x} (x) \\
&=\frac{\mathrm{d} g}{\mathrm{d}x} (x)
\end{align}の意味です.

よって,合成関数の微分法から
\begin{align}
g^\prime(x)
&= f^\prime(-x) \cdot \frac{\mathrm{d} (-x)}{\mathrm{d} x} (x) \\
&=-f^\prime(-x)
\end{align}なので,最初の関係式が示されます.//

最後の計算を,全て簡略化記法で計算するなら
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f(-x)}{\mathrm{d}x}
&=\frac{\mathrm{d} f(-x)}{\mathrm{d}(-x)} \cdot \frac{\mathrm{d} (-x)}{\mathrm{d} x} \\
&=-\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (-x)
\end{align}となりますが...いつも混乱せずに計算できますか?

このように,上の例から

  1. 書き手がどちらの意味で書いているのかわかりにくい
  2. 計算の際に,混乱する可能性がある
  3. $g(x)=f(-x)$と置き直せば,計算の際に混乱しない
がわかりました.

結論

まず,結論から述べておきます.記事を下まで読んだらまた見返して見てください.
合成関数の微分で混乱しない方法

  1. 簡略記法をやめる:関数を$f(x)$$=g(h(x))$の形に書き直す.
    • 例えば,$g(x^2+x+1)$は$f(x)=g(h(x))=g(x^2+x+1)$と書き直しましょう.
  2. 合成関数の導関数の公式に基づいて計算する.
    • 上の例で言えば,
      \begin{align}
      f^\prime (x)
      &=\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (h(x))
      \cdot \frac{\mathrm{d} h}{\mathrm{d}x} (x) \\
      &=\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x^2+x+1)
      \cdot (2x+1)
      \end{align}です.

ただし,
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (h(x))
=\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x^2+x+1)
\end{align}などが何を意味しているかをきちんと理解できていることが前提です.これについては,以下で説明します.

関数の記法

「関数$f$」は,ある値$x$を値$f(x)$に対応させる「写像」です.これを
\begin{align}
f:x\mapsto f(x)
\end{align}のように表すこともあります.

つまり,「関数$f\color{red}{(x)}$」と書くのは本来おかしいのです.ただ,こう書くと変数が$x$であることも同時にわかるため,「簡略化した記法」としてよく使われます.

まとめ(関数の簡略記法)
関数$f(x)$とは,
\begin{align}
f:x\mapsto f(x)
\end{align}の「簡略記法」である.

導関数(微分)の記法

同様に,$f$の導関数の【変数まで同時に指定した「簡略化した記法」】として
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x)
\end{align}がよく使われます.

導関数の簡略化していない「本来の書き方」は
\begin{align}
f^\prime
\end{align}です.つまり,$f^\prime$は$x$を
\begin{align}
f^\prime(x)=\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x)
\end{align}に対応させる写像です.

まとめ(導関数の簡略記法)
導関数(微分)$\displaystyle \frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x)$とは,
\begin{align}
f^\prime:x\mapsto f^\prime(x)=\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x)
\end{align}の「簡略記法」である.

例えば,$f(x)=x^2+x+1$において,
\begin{align}
& f^\prime (x) =\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x)= 2x+1 \\
& f^\prime (-x) =\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (-x)= 2(-x)+1 \\
& f^\prime (x^2+2) =\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x} (x^2+2)= 2 (x^2+2)+1
\end{align}です.

合成関数

合成関数の定義
関数$g$, $h$の合成関数$f=g\circ h$とは,
\begin{align}
x\mapsto f(x)=g(h(x))
\end{align}で定められる写像のことである.

しかし,新しい$f$を持ち出してわざわざ新しい関数を定義するのが面倒なため,「関数$g(h(x))$」の形を考えることが多いです.例えば,「関数$g(x^2)$」は正確には「関数$f(x)=g(x^2)$」ということです.

さて,この関数を微分するときに,簡略化記法を用いるとどのようになるでしょうか.まず,

合成関数の導関数
関数$g$, $h$の合成関数$f=g\circ h$の導関数は
\begin{align}
f^\prime (x)
=g^\prime (h(x)) h^\prime (x)
\end{align}で与えられる.
なので,ちゃんと$f(x)=g(h(x))$と書いて計算すれば
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} f}{\mathrm{d}x}(x)
&=g^\prime (x^2) \frac{\mathrm{d} (x^2)}{\mathrm{d}x} (x) \\
&=g^\prime (x^2)\cdot 2x
\end{align}と迷わず計算できます.

一方で,簡略化記法$g(x^2)$を用いた計算は
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} g(x^2)}{\mathrm{d}x} (x)
&=\color{red}{\frac{\mathrm{d} g(x^2)}{\mathrm{d}(x^2)} (x)} \frac{\mathrm{d} (x^2)}{\mathrm{d}x} (x) \\
&=\color{red}{g^\prime (x^2)}\cdot 2x
\end{align}となります(通常,1行目の$(x)$は省略されます).慣れれば早く計算できますが,

  • 教科書に書いてある合成関数の微分法との対応がすぐにわからない.
  • 赤字部分が等しいのがわかりにくい.
ことから,計算ミスや混乱の原因にもなるのではないでしょうか.

まとめると,

まとめ(合成関数の導関数の簡略化記法)
関数$g(h(x))$の導関数は
\begin{align}
\frac{\mathrm{d} g(h(x))}{\mathrm{d}x}(x)
&=\frac{\mathrm{d} g(h(x))}{\mathrm{d}(h(x))}(x)\cdot \frac{\mathrm{d} h(x)}{\mathrm{d}x}(x) \\
&=g^\prime (h(x)) h^\prime (x)
\end{align}で与えられる.ただし,1行目の$(x)$は通常省略される.
となります.

以上のことから,私は(特に初学者は)「簡略記法」を用いないことをオススメします.
混乱したら,上の「結論」の方法で計算しましょう.