POINT
- 因数分解の手順を紹介.
- 方法さえ理解できれば,公式を覚えずに済む.
高校に入ってすぐに因数分解の公式に苦しんだ人,結構いるんじゃないでしょうか?
この記事では,因数分解のコツを紹介します.マスターできれば,複雑な公式を覚えずに済ますことができます.
因数分解の手順
因数分解は,以下の手順で行います:因数分解の手順
- Step1:因数定理を使う
- 多項式$f(x)$が$f(a)=0$を満たすとき,$x-a$を因数に持ちます.
- Step2:因数$(x-a)$をくくりだす
- Step3:Step1とStep2を繰り返す
では,実際に例を見てみましょう.
例:$f(x)=x^3-1$の因数分解
公式がなくても,上の手順で簡単に導けることを見てみましょう.STEP
因数定理を使う
ひと目みてすぐわかるように,$f(1)=0$ですね.よって,$x-1$を因数に持ちます.
(複雑な多項式の場合は,候補を順に代入するしかありません.但し,候補は限定できます:因数の見つけ方)
(複雑な多項式の場合は,候補を順に代入するしかありません.但し,候補は限定できます:因数の見つけ方)
STEP
因数をくくりだす
慣れていないとここが難しいかもしれません.でも,計算するコツが有るんです.
左辺は$x^3$が最大次数の項なので,$(\cdots)$の中の最大次数は
いま,因数定理から
\begin{aligned}
x^3-1=(x-1)\times(\cdots)
\end{aligned}
となることがわかっています.ここで,$(\cdots)$の中の最大次数から決めていくのがコツです.x^3-1=(x-1)\times(\cdots)
\end{aligned}
左辺は$x^3$が最大次数の項なので,$(\cdots)$の中の最大次数は
\begin{aligned}
x^3-1=(x-1)(x^2+\cdots)
\end{aligned}
となるはずです.x^3-1=(x-1)(x^2+\cdots)
\end{aligned}
右辺を展開すると$x^3-\textcolor{red}{x^2}+\cdots$となるので,左辺と一致するためには$\textcolor{red}{x^2}$が消えなければなりません.よって,次の次数は
\begin{aligned}
x^3-1=(x-1)(x^2+x+\cdots)
\end{aligned}
であることがわかります.x^3-1=(x-1)(x^2+x+\cdots)
\end{aligned}
同様に,右辺は$x^3-\textcolor{red}{x}$となるので,$\textcolor{red}{x}$が消えるように定数を決めると,
\begin{aligned}
x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)
\end{aligned}
と全ての項を求めることができました.x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)
\end{aligned}
STEP
Step1とStep2を繰り返す
(実数の範囲では)$x^2+x+1=0$の解はありませんから,因数分解終了です!
【補足:虚根まで考える場合】
2次方程式の解の公式を使えば,2つの解が求められます.
そのうち一つの解を$\alpha$としましょう:$\alpha^2+\alpha+1=0$
方程式の係数が実数なので,$\alpha$の複素共役$\bar{\alpha}$も解となります(実際,両辺の複素共役を取れば,$\bar{\alpha}^2+\bar{\alpha}+1=0$).
以上より,$x^2+x+1=(x-\alpha)(x-\bar{\alpha})$と因数分解できます.
応用
練習問題
$x^3+1$, $x^5\pm1$なども同じ方法で計算できます.上の方法をマスターすれば,公式を覚える必要はありません!これまで公式として覚えてきたものも,簡単に導出できることを確かめてみて下さい.
因数の見つけ方
整数を係数とする多項式\begin{aligned}
f(x)=
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_0,\qquad(a_n,a_0\neq0)
\end{aligned}
の因数分解を考えましょう.有理数の因数を見つける方法について調べてみます.f(x)=
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_0,\qquad(a_n,a_0\neq0)
\end{aligned}
この式が因数$p/q$ ($p,q$は互いに素な整数)を持つとすれば,$f(p/q)=0$ですから
\begin{aligned}
0&=a_np^n+a_{n-1}p^{n-1}q+\cdots +a_1pq^{n-1}+a_0q^n\\
&=p\left(a_n p^{n-1}+\cdots +a_1q^{n-1}\right)+a_0q^n
\tag{1}
% \label{eq:a0}
\end{aligned}
0&=a_np^n+a_{n-1}p^{n-1}q+\cdots +a_1pq^{n-1}+a_0q^n\\
&=p\left(a_n p^{n-1}+\cdots +a_1q^{n-1}\right)+a_0q^n
\tag{1}
% \label{eq:a0}
\end{aligned}
\begin{aligned}
&=a_np^n+q\left(a_{n-1}p^{n-1}+\cdots + a_0q^{n-1}\right)
\tag{2}
% \label{eq:an}
\end{aligned}
となります.従って,$p,q$が互いに素であることから
&=a_np^n+q\left(a_{n-1}p^{n-1}+\cdots + a_0q^{n-1}\right)
\tag{2}
% \label{eq:an}
\end{aligned}
- 式(1)から$p$は$a_0$の約数
- 式(2)から$q$は$a_n$の約数
であることがわかります.
以上をまとめると
因数の候補
整数を係数とする多項式
\begin{aligned}
f(x)=
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_0,\qquad(a_n,a_0\neq0)
\end{aligned}
を考える.既約な有理数$p/q$に対し$f(p/q)=0$となるならば,
- $p$は$a_0$の約数
- $q$は$a_n$の約数
等比数列の和の公式
初項$a_0$,公比$r$の等比数列$\{a_n\}$($a_n=a_0r^n$)の和は\begin{aligned}
\sum_{k=0}^n a_n
=a_0 \frac{1-r^n}{1-r}
\end{aligned}
で与えられます.\sum_{k=0}^n a_n
=a_0 \frac{1-r^n}{1-r}
\end{aligned}
これは,以下のように書き直せば,上で計算した$x^3-1$の因数分解の一般化になっていることがわかります:
\begin{aligned}
r^n-1=(r-1)(r^{n-1}+r^{n-2}+\cdots +1).
\end{aligned}
r^n-1=(r-1)(r^{n-1}+r^{n-2}+\cdots +1).
\end{aligned}