ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー・電位)の計算方法を解説します.この記事では,「力学(一様重力場)」と「電磁気学(クーロン場)」の具体例を通じて,公式の導出方法や使い方が理解できるようになります.
- ポテンシャルエネルギー(位置エネルギーや電位)の求め方を整理します.
- ①基準点まで「自分がする仕事」と,②基準点から「外力がする仕事」の2つの方法があります.
- 力学の一様重力場,電磁気学のクーロン場の具体例で詳しく解説します.
- ポテンシャルエネルギーを求める2つの方法
- ポテンシャルエネルギーの具体例(力学・電磁気学)
- よくある質問|ポテンシャルエネルギー
- まとめ|ポテンシャルエネルギーの求め方のポイント
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ポテンシャルエネルギーを求める2つの方法
位置$\boldsymbol{r}$で物体に働く力$\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r})$が与えられている(*1)ときに,位置$\boldsymbol{x}$でのポテンシャルエネルギーを求めるときの考え方は2つあります.- ポテンシャルエネルギーの基準点$\boldsymbol{x}_0$から位置$\boldsymbol{x}$まで物体を移動させる際に,「外から自分が」する仕事を計算する
- 物体が位置$\boldsymbol{x}$から基準点$\boldsymbol{x}_0$まで移動する際に,「外力から」される仕事を計算する(ポテンシャルエネルギーを放出させる)
2つの方法は,どちらも「エネルギー保存則」を利用してポテンシャルエネルギーを計算しています.
そして当然,両者の計算結果は一致します.
例えば,山のふもとを$\boldsymbol{x}_0$,頂上を$\boldsymbol{x}$として重力場の位置エネルギーを考えるとき,
- 1. は山のふもとから頂上まで物体を持っていくときに自分がする仕事を調べる方法
- 2. は山の頂上から物体を落として,どれだけのエネルギーを放出するかを調べる方法
というイメージです.
以下で詳しく見てみましょう.
方法①|基準点から位置まで外から「自分が」仕事をする場合
この考え方で注意しなければいけないのは,「仕事をするのは自分」であるという点です.つまり,「自分」にかかる力を用いて仕事を計算する必要があります.作用・反作用の法則から自分にかかる力は$\tilde{\boldsymbol{F}}(\boldsymbol{r})=-\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r})$ なので,ポテンシャルエネルギーは
U(\boldsymbol{x})
=\int_{\boldsymbol{x_0}}^{\boldsymbol{x}}
\tilde{\boldsymbol{F}}(\boldsymbol{r})\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{r}
=\int_{\boldsymbol{x_0}}^{\boldsymbol{x}}
(-\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r}))\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{r}
\end{aligned}
方法②|位置から基準点まで「外力が」仕事をする場合
物体に位置エネルギーを放出させるというのは,物体が基準点に移動するまでに外力からされる仕事量を計算するということです.このとき,- 1つ目の考え方とは積分経路が逆になる
ことに注意しましょう.
したがって,ポテンシャルエネルギーは
U(\boldsymbol{x})
=\int_{\boldsymbol{x}}^{\boldsymbol{x_0}}
\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r})\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{r}
\end{aligned}

ポテンシャルエネルギーの具体例(力学・電磁気学)
上の2つの方法で,具体例の計算をしてみましょう.力学の例:一様重力場のポテンシャルエネルギー
重力加速度$g$の一様重力場中にある質量$m$の物体を考えましょう.鉛直上方向を正とすると,物体には$-mg$の力が働きます.
基準点からの高さを$h$とすれば,位置エネルギーが$mgh$で表わされることは知っていますね.
これを上の2つの考え方で見てみましょう.
1つ目の考え方は「高さ$h$まで物体を持ち上げるまでに自分がした仕事が,物体のポテンシャルエネルギーになる」という立場です.
一方で2つ目の考え方は「高さ$h$にある物体を基準点まで自由落下させたときに,重力からされた仕事が始めに持っていたポテンシャルエネルギーである」という立場です.
簡単ですね.
電磁気学の例:クーロン力のポテンシャルエネルギー
電荷$q_1$が原点に置かれているとき,位置$\boldsymbol{r}$にある電荷$q_2$には力\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r})
=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1 q_2}{r^2}\frac{\boldsymbol{r}}{r}
\end{aligned}
では,ポテンシャルエネルギーの基準点を無限遠にとり,$q_2$のポテンシャルエネルギーを2つ目の方法で求めてみましょう:
U(\boldsymbol{r})
&=\int^{\infty}_{\boldsymbol{r}}
\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r}^\prime)\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{r}^\prime \\
&=\int^{\infty}_{r} \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1 q_2}{r^{\prime 2}}\mathrm{d}r^\prime \\
&=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{q_1 q_2}{r}
\end{aligned}
よくある質問|ポテンシャルエネルギー
位置エネルギーとポテンシャルエネルギーは違いますか?
位置エネルギーはポテンシャルエネルギーの一種です.物理の分野によって呼び方が変わりますが,力学では位置エネルギー,電磁気学では電位エネルギーと呼ばれることが多いです.
ポテンシャルエネルギーの基準点の決め方は?
基準点は自由に決められます.一様重力場では地面,クーロン場では無限遠点を選ぶことが多いです.
まとめ|ポテンシャルエネルギーの求め方のポイント
ポテンシャルエネルギーを求めるには,①基準点から位置まで自分がする仕事を考える方法と,②位置から基準点まで外力がする仕事を考える方法があります.どちらも計算結果は同じになりますが,問題によって使いやすい方法を選びましょう.具体例として一様重力場(位置エネルギー)とクーロン場(電位)の場合を取り上げました.大学物理や受験対策では公式を丸暗記するのではなく,導出過程を理解しておくことが大切です.あわせて読みたい関連記事
*1:もちろん,保存力であるわけですが