シュレーディンガー方程式(中心力場)

POINT

  • 中心力場のシュレーディンガー方程式を解く流れを解説します.
  • ヘルムホルツ方程式も特殊な場合として含まれるので,波動現象(電磁波,音波など)の理解にも役立ちます.

【関連記事】

Schrödinger方程式

ポテンシャルが球対称$V(\boldsymbol{r})=V(r)$である場合には,3次元シュレーディンガー方程式が
\begin{aligned}
\biggl[-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta + V(r) \biggr] \varphi(\boldsymbol{r})
&=E\varphi(\boldsymbol{r})
\end{aligned}
で与えられます.これは,
\begin{aligned}
[\Delta + f(r)] \varphi(\boldsymbol{r}) =0
\end{aligned}
という微分方程式に帰着できます.この方程式はヘルムホルツ方程式を特殊な場合として含んでいます($f(r)=k^2$).以下,この方程式の解を求めてみましょう.


ここで,極座標のラプラシアンは

\begin{aligned}
\Delta u
&=\frac{1}{r} \frac{\partial^2}{\partial r^2} (ru)
+\frac{1}{r^2} \Delta_{S} u
\end{aligned}
で与えられます.但し,
\begin{aligned}
\Delta_{S} u
&=\frac{1}{\sin\theta}\frac{\partial}{\partial \theta}\biggl(\sin\theta \frac{\partial u}{\partial \theta} \biggr)
+\frac{1}{\sin^2\theta}\frac{\partial^2 u}{\partial \varphi^2}
\end{aligned}
は2次元球面上の微分演算子を表します.

解法(変数分離)

それでは,微分方程式$[\Delta + f(r)] \varphi(\boldsymbol{r}) =0$を変数分離の方法で解いていきます.

変数分離

$\varphi(\boldsymbol{r})=R(r)Y(\theta,\varphi)$と変数分離した解を代入し,$\times\dfrac{r^2}{R(r)Y(\theta,\varphi)}$とすると
\begin{aligned}
\frac{r}{R}\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}r^2}(rR)+r^2f(r)
= -\frac{1}{Y}\Delta_{S} Y (=\lambda)
\end{aligned}
となり,左辺が$r$だけの関数,右辺が$\theta,\varphi$だけの関数に分離できます.

したがって,両辺は定数でなくてはならず,その定数を$\lambda$とすると2つの微分方程式

\begin{aligned}
& \frac{1}{r}\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d}r^2}(rR)+\biggl[f(r)-\frac{\lambda}{r^2}\biggr]R =0
\tag{1}
\end{aligned}
\begin{aligned}
& \Delta_{S} Y + \lambda Y=0
\tag{2}
\end{aligned}
が得られます.

角度変数

まず角度に関する方程式(2)を解いていきましょう(動径方程式(1)は次の節で考えます).

これは,球面調和関数の満たす微分方程式となっており,関連記事[A]で扱っています.

ここでは,結果だけ示します:

角度方程式
\begin{aligned}
\Delta_{S} Y(\theta,\varphi)+ \lambda Y(\theta,\varphi) =0
\end{aligned}
を満たすとき,$|m|\leq l$を満たす整数$l,m$を用いて
  1. 固有値は$\lambda = l(l+1)$と表すことができ,
  2. その規格化された固有関数は
    \begin{aligned}
    &Y_l^{\:m}(\theta,\varphi) \\
    &=(-1)^{(m+|m|)/2}\sqrt{\frac{2l+1}{4\pi} \frac{(l-|m|)!}{(l+|m|)!}} \\
    &\qquad\qquad\qquad\quad \times P_l^{\:m}(\cos\theta)e^{im\varphi}
    \end{aligned}
    となる.

動径関数

$\lambda=l(l+1)$の場合の動径方程式(1)において
\begin{aligned}
R_l(r) = \chi_l(r)/r
\end{aligned}
とすると
\begin{aligned}
\frac{\mathrm{d}^2 \chi_l}{\mathrm{d}r^2}+\biggl[f(r)-\frac{l(l+1)}{r^2}\biggr]\chi_l =0
\end{aligned}
になります.


$f(r)$としてよく現れるものには次があります.具体的な動径関数は以下の記事で求めています.

$f(r)$ 名称 記事
$f(r)=k^{2}$ ヘルムホルツ方程式
$ (\Delta + k^2) \varphi(\boldsymbol{r}) =0$
ヘルムホルツ方程式 - Notes_JP
$f(r)=0$ ラプラス方程式
$\Delta \varphi(\boldsymbol{r}) =0$
ラプラス方程式 - Notes_JP
$\displaystyle f(r)=\frac{2\mu e^{2}}{\hbar^{2}}\frac{1}{r}$ 水素原子のSchrödinger方程式 参考文献[1] $\text{\sect} 5.8$

参考文献