数学

テンソルの変換則とその導出

POINT 基底の変換則から,高階のテンソルの変換則が導かれる. 導出した変換則を一覧として整理した. 以前の記事で, 「線形空間$V$の基底・双対基底の変換則」から,自然に「反変・共変ベクトルの変換則」が導かれること を示しました.この議論を一般化す…

反変・共変ベクトルの変換則〜双対空間から理解する

POINT 双対空間は「相対論の共変ベクトル」や「量子力学のブラベクトル」として特に説明なく導入されている. 双対空間を学べば,共変ベクトルの変換則が自然に導かれる. ある線形空間 (ベクトル空間) に対し定義される「双対空間」は,物理の様々な場面で …

【例】役に立つ標準偏差〜偏差値・ボリンジャーバンド・測定

POINT 標準偏差の役立つ実用例を紹介. 偏差値・ボリンジャーバンド・測定 Excelによるボリンジャーバンドの描画法. 確率・統計で学ぶ「標準偏差」の定義を知っている人は多いと思います.また,「標準偏差」が分布のバラツキを表していることも良く知られ…

等長変換:回転・反転・Lorentz変換

POINT ユークリッド空間の距離を保つ変換は「回転」と「反転」で表される. ミンコフスキー空間の距離を保つ変換はLorentz変換となる. 距離を保つ変換が「回転」と「反転」で表されることはよく知られています.但し,これは「ユークリッド空間」での話です…

極限操作(微分・積分・lim)の交換:定理と反例

POINT 極限操作(lim,微分,積分)を入れ替えられない例の紹介. 一様収束や微分,積分をグラフで理解しておけば簡単に反例をつくることができる. 絵(グラフ)で考えるとわかりやすいです.次のポイントさえ掴んでいれば,反例を考えることは簡単です: 微…

【例】収束因子

POINT 数学的に収束因子が正当化される例の紹介. 物理においては,実験との比較によって正当化される. 物理では,広義積分の計算において収束因子を掛けて収束性を良くし,最後に収束因子の影響を除く操作を行うことがあります.この操作が正当化されるの…

【例】選出公理の使い方

POINT 選出公理(選択公理,Axiom of choice)の主張と例を紹介. どこで使われているのかわかりにくい,選出公理.その適用例を紹介します. 選出公理 選出公理の適用例 例1:任意の無限集合は, 可算無限集合を部分集合として含む. 参考文献 選出公理まず…

平均・分散・標準偏差の推定(点推定)

POINT 有限個のサンプルから,分布の平均・分散・標準偏差を推定する方法. 測定への応用を紹介. ある分布から,有限個のサンプルを取り出して「元の分布」の情報を推定する方法について解説します.これは,何かの「測定」を行う際には避けられない話題で…

曲面積の求め方

POINT 定義さえ理解しておけば,(派生)公式を覚えなくても計算できる. 具体例として,回転体の表面積の派生公式などを導く. 曲面積の定義 派生公式 球の表面積 グラフの曲面積($X=x$, $Y=y$, $Z=f(x,y)$) $y=f(x)$の回転体($X=x$, $Y=f(x)\cos\theta$…

0.999・・・=1の意味

POINT 0.999・・・=1という式の意味について解説する. 10進法では同じ数が2通りの方法で表せることがわかる. 2進数を始め,N進数でも同じことが起こる. 0.999・・・=1という式は「正しい式」として教えられますが,納得できている人は多くないのではない…

因数分解の手順

POINT 因数分解の手順を紹介. 方法さえ理解できれば,公式を覚えずに済む. 高校に入ってすぐに因数分解の公式に苦しんだ人,結構いるんじゃないでしょうか? この記事では,因数分解のコツを紹介します.マスターできれば,複雑な公式を覚えずに済ますこと…

【パラドックス】「1=−1」と複素数の平方根

POINT 複素数の平方根で有名な1=−1となるパラドックスを紹介. 実数の平方根と異なり,符号を一意に決められないことが原因. 高校生や大学の複素解析を学んだとき,「平方根」で混乱したことはないでしょうか?一見正しそうな計算により,1=−1 が導かれる…

回転行列(2次元)

回転行列をベクトルに作用させると,原点中心に回転したベクトルが得られる.POINT 回転行列は,ベクトルを原点周りに回転したベクトルに写す. 回転行列(2次元・3次元)は図をかくと簡単に導出できる. 回転行列を簡単に導出する方法を紹介します. 【関連…

10進数から2進数への変換法

POINT 10進数から2進数へ変換する方法を解説する. 10進数の各桁を求めるのと同じことをしているのがわかる. 「2進数の各桁を求めること」は,「10進数の各桁を求めるのと同じ操作」に過ぎないのです. 難しいことは何もありません.10進数の各桁をどうやっ…

ランダウの記号の使い方

POINT ランダウの記号は,無限小や無限大を議論する際に現れる. 微小量の高次項を表す際,$o(\cdot)$や$O(\cdot)$といった記号が現れます(カリグラフィー$\mathcal{O}$が使われることもあります).例えば,微積分学の教科書の中には,証明の中でこの記号…

【Lebesgue積分】優収束定理(limと積分の順序交換)

POINT 優収束定理(limと積分の順序交換)と応用例の解説. 優収束定理とその適用例を紹介します.微分・積分の順序交換については,以下の記事を参照して下さい: 【Lebesgue積分】微積分の順序交換 - Notes_JP 優収束定理 例 参考文献 優収束定理優収束定…

【正項級数】収束判定法と例

POINT 正項級数の収束を判定する方法と例の紹介. 正項級数というと特殊な感じがするかもしれません.しかし,\begin{aligned} \biggl| \sum_n a_n \biggr| \leq \sum_{n} |a_{n}| \end{aligned}から (正項級数)$\displaystyle\sum_n |a_n|$が収束$\Righta…

【中心極限定理】測定値と標準誤差,コイン投げ

POINT 中心極限定理(Central limit theorem, CLT)の解説. 応用例として測定やコイン投げを紹介. 世の中に正規分布があふれる背景の一つに,中心極限定理の存在が挙げられます. 中心極限定理 【例】測定値と標準誤差 真値$\mu$の推定量について,中心極…

【Lebesgue積分】微積分の順序交換

POINT 微積分の順序交換に関する定理の紹介. 応用例としてGauss積分について解説する. 微積分の順序交換に関する定理と,応用例を紹介します. 極限記号$\lim$と,積分$\displaystyle\int$の順序交換(優収束定理)については,次の記事を参照して下さい:…

【反例】Riemann積分可能でも,Lebesgue積分は不可能な例:sinx/x

POINT 「Riemann可積分であり,Lebesgue可積分でない」有名な例の紹介. 関数$\dfrac{\sin x}{x}$は,広義Riemann積分可能でも,Lebesgue積分は不可能な有名な例として知られています.じゃあ,「Lebesgue積分はRiemann積分よりも計算できる関数が少ないのか…

チェビシェフの不等式とその応用

POINT チェビシェフの不等式(Chebyshev’s inequality)の導出と応用例の紹介. チェビシェフの不等式から,標準偏差がバラツキの尺度となることがわかる. チェビシェフの不等式から,「標準偏差がバラツキの尺度として用いられる」理由がわかります. 【覚…

積分公式(三角関数・双曲線関数・指数関数・対数関数)の一覧と導出

POINT 積分公式の一覧(途中計算あり). 対象:三角関数・双曲線関数・指数関数・対数関数. 基本的な不定積分公式を導出します.以下では$a>0$とし,積分定数は省略します. 他の積分公式はこちら: ガウス積分と派生公式 - Notes_JP 指数関数 三角関数 双…

行列の対角化とは?

POINT 対角化の操作は,基底の変換(座標変換)に相当する. 行列の対角化の公式を「行列表示」の考え方で簡単に導く. 対角行列 定義 性質 対角化 対角化とは? なぜ必要? $P^{-1}AP$の意味は? 行列表示によるアプローチ 対角行列であるための条件 対角行…

【行列表示】複素数・四元数・Pauli行列

POINT 行列表示とは,ベクトル空間の基底を単位ベクトルとみなすこと. 複素数の行列表現・四元数の行列表現・Pauli行列を簡単に導出できることを確かめる. 線形代数や量子力学では「線形写像/演算子を行列表示しなさい」という問題に出会います.この記事…

条件付き確率をサイコロ1個で考える

POINT サイコロ1個の超極端な例で,条件付き確率の理解を深めましょう. ベン図を使って図解します. 何事も,理解のコツは「極端な例」を考えることです.例えば, 数学なら,すごく数が小さい場合/大きい場合を考える. 物理なら,物理量が$0$あるいは$\in…

条件付き確率いらず!モンティ・ホール問題

POINT モンティ・ホール問題は,誤答しやすいことで知られる確率問題. モンティ・ホール問題を簡単に解く方法を紹介する. 条件付き確率なしでモンティ・ホール問題を理解する方法を紹介します.問題を知っている人向けに結論から.次の考察だけで済みます…

【メモ】REAL AND COMPLEX ANALYS (Walter Rudin)

昔読んだときのノートが出てきたので,読み直してみようかな,という試み(をするかもしれないので,ページだけを用意). 他のルベーグ積分の教科書に比べて,道筋が明快で読みやすかった記憶があります.Real and Complex Analysis(表紙は赤と緑2種類が…

ベッセル関数の関係式

POINT ベッセル関数の関係式. 積分表示 平面波 参考文献 積分表示積分表示 Besselの積分表示: $J_n(x)$$\displaystyle =\frac{1}{2\pi}\int_{0}^{2\pi} \cos\bigl(x\sin\theta-n\theta\bigr)\,\mathrm{d}\theta$ Hansenの積分表示: $J_n(x)$$\displaystyl…

不偏推定量とは

不偏推定量 平均値 分散 補足 参考文献 不偏推定量『推定量の分布の期待値』が『推定したい値の真値』と一致することは,「性質が良い」推定量の条件と言えるでしょう.この性質を持つ推定量を,不偏推定量 (Unbiased estimator) と呼びます.無作為標本$\{X…

関数の平行移動と波動

POINT 関数$y=f(x)$の$x$軸,$y$軸方向の平行移動を表す方法. 波動現象(例えば,音や光)を扱う際,「速度$V$で進む波」を関数で表す必要があります.これは,「関数の平行移動」を用いて表現することができます. 【関連記事】 関数の平行移動 x方向 y方…